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千葉地方裁判所 平成2年(わ)746号 判決

主文

被告人両名をそれぞれ懲役一〇年及び罰金一八〇万円に処する。

被告人両名に対し、未決勾留日数中各二五〇日を、それぞれその懲役刑に算入する。

被告人両名においてその罰金を完納することができないときは、金五〇〇〇円を一日に換算した期間、その被告人を労役場に留置する。

被告人両名から、押収してあるビニール袋入りヘロイン一〇袋(平成二年押第一八七号の1ないし10)を没収する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人両名は、共謀の上、法定の除外事由がないのに、営利の目的で、麻薬を不正に輸入しようと企て、平成二年五月二二日、タイ王国バンコク国際空港において、被告人オプヨが麻薬であるジアセチルモルヒネ(ヘロイン)の塩酸塩を含有する白色粉末一九七七・三三グラム(平成二年押第一八七号の1ないし10は鑑定後の残量)を隠匿した布製スーツケース(同号の18)を千葉県成田市三里塚字御料牧場一番地の一所在新東京国際空港までの受託手荷物としてノースウエスト航空会社に運送委託し、情を知らない同航空会社社員らをして、同日午後三時一五分ころ、ノースウエスト航空二八便により右新東京国際空港まで運送させた上、同航空機から機外に搬出させて本邦内に持ち込み、もって麻薬を輸入するとともに、同日午後四時一五分ころ、同空港内東京税関成田税関支署南棟旅具検査場において、被告人ナチュックが右スーツケースを持って携帯品検査を受けるに際し、同支署税関職員に対し、右のとおり麻薬を携帯している事実を秘して申告せず、もって輸入禁制品である麻薬を輸入しようとしたが、同支署税関職員に発見されたためその目的を遂げなかったものである。

(証拠の標目)(省略)

被告人両名について

(事実認定の補足説明)

被告人ナチュックの弁護人は、被告人ナチュックは、本件ヘロインとは何らかかわりを持っておらず、本件犯行について被告人オプヨと共謀したこともないので、被告人ナチュックは無罪である旨主張し、被告人ナチュックも当公判廷において、今回タイ王国へ旅行したのは洋服の買い付けのためであり、タイ王国では被告人オプヨとは別の部屋に宿泊して別行動をとり、自分自身は現地で知りあったジョン及びカーチスなる者や氏名不詳の女性と行動をともにしていたものであって本件ヘロインのことは全く知らず、また、新東京国際空港で本件ヘロインの隠匿されていた被告人オプヨ所有の布製スーツケース(平成二年押第一八七号の18、以下、本件スーツケースという。)を携帯して税関検査を受けたのは、同空港で被告人オプヨから乗継ぎ便の状況を見てくる間預かってくれと頼まれたからである旨の供述をしている。

また、被告人オプヨの弁護人は、被告人オプヨは、本件犯行について被告人ナチュックと共謀したことはないし、本件スーツケースの中に本件ヘロインが入っていたことも知らなかったから、本件犯行の故意がなく、仮に被告人オプヨに右ヘロインの存在についての認識があったとしても、被告人オプヨは、それをアメリカ合衆国へ密輸する意図であったのであり、航空機乗換えの際の荷物移動手続きについての誤解から日本へ搬入してしまったものであって、右ヘロインを日本へ搬入すること自体の故意が欠けていたから、被告人オプヨは無罪である旨主張し、被告人オプヨも当公判廷において、タイ王国で被告人ナチュックとともに本件ヘロインを購入したことは認めるものの、同国バンコクを出発する前夜、自分がクリーニング店に出かけている間に本件スーツケースを荷造りしたのは被告人ナチュックで、同被告人が本件ヘロインを本件スーツケースに入れたものと考えられるのであり、自分自身は、被告人ナチュックから、本件ヘロインはジェフリー・コスキーがアメリカ合衆国へ運搬して行くものだと聞かされてこれを信じていたので、本件スーツケースの中に本件ヘロインが入っていたとは知らなかった旨の供述をしている。

そこで、以下これらの点について判断する。

一  被告人ナチュックの本件ヘロインの存在についての認識

被告人ナチュックが新東京国際空港で携帯品の一つであった本件スーツケースの税関検査を受けた際、その中に本件ヘロインが入っていたことは、同被告人も認めているし、証拠上も明らかであるところ、前掲の関係各証拠によれば、被告人ナチュックは、右携帯品の税関検査に先立ち、検査官に対し申告する物も預かり物もない旨述べていたこと、携帯品検査は、同人の携帯していた紺色布製スーツバッグ、灰色布製スーツバッグ、茶色ビニール製スーツケース、黒色ビニール製ショルダーバッグ、特大瓶入り洋酒及び本件ヘロインの隠匿されていた本件スーツケースの順に行われたこと、右のうち灰色布製スーツバッグ及び本件スーツケースはいずれも被告人オプヨ所有の物であること、被告人ナチュックは、右灰色布製スーツバッグの開披検査が終了したころから、額などに汗をかき、その態度に落ち着きがなくなり、検査官に対し、乗継ぎ予定の飛行機の出発時刻は午後五時であり、それに遅れるから早くして欲しいなどと申し入れたこと、しかし、同被告人は、その便の搭乗予約をしておらず、右検査時にはもはやその飛行機に乗ることはできない状態であったこと、検査官が本件スーツケースの開披検査をしようとしたところ、同被告人は当初は本件スーツケースに付けられた錠の鍵がない旨述べていたが、そのうち右灰色布製スーツバッグの中から鍵を取り出し、本件スーツケースを検査台から自己の足元に下ろしてその鍵を使って本件スーツケースの錠を開けたこと、同被告人は、本件スーツケースの錠を開けるや異常に興奮し、その中身を床に投げ出すなどして検査官による本件スーツケースの検査を妨害したこと、検査官が本件ヘロインが隠匿されていた紙袋を手に取ったところ、被告人ナチュックは右紙袋を検査官から奪い取って本件スーツケースの中に入れ、これは被告人オプヨの物である旨初めて申し立てたこと、本件スーツケースの中には、被告人ナチュックの使用中のスーツも入っていたが、これについて検査官に追求されるや、同被告人は、右スーツは検査官が誤って本件スーツケースの中に入れたものだなどと声高にまくしたてたことなどの事実が認められ、以上の事実からすれば、被告人ナチュックは本件スーツケースの開披検査、とりわけ本件ヘロインが隠匿されていた紙袋の開披検査を避けようとしていたと推認することができる上、被告人ナチュックが、本件スーツケースを被告人オプヨの物である旨申し立てるに至った右経緯やその中にあった被告人ナチュックのスーツについての弁解などをも考慮すれば、被告人ナチュックが本件ヘロインが隠匿されていた本件スーツケースの中に、被告人ナチュック自身の物と認められるのを回避したい物、すなわち本件ヘロインが存在していることを認識していたと強く推認することができる。

そして、証人コスキー及び被告人オプヨの当公判廷における各供述によれば、被告人ナチュックの今回のタイ王国への渡航目的は、ヘロインの買付けであり、同被告人はタイ王国チェンマイにおいて、ヘロインを購入したというのであるが、証人コスキーは同被告人の渡航目的を供述することになんら利害関係を有しておらず、また、被告人オプヨは前記弁解の内容からすれば被告人ナチュックと利害が対立してはいるが、自らもまたヘロインの買付け目的でタイ王国へ渡航し、チェンマイでヘロインを購入した旨の自己に不利益な事実をも同時に供述していること、更に、右両名の右各供述は、関係各証拠によって認められる次のような客観的事実、すなわち、被告人両名及びコスキーが連番の航空券を購入して同じ日にバンコクからチェンマイへ行っていること、被告人両名のアメリカ合衆国出発時から本邦入国時までの航空機利用の状況、本邦に入国するための航空券購入時の連絡先が被告人両名ともにバンコクニューエンパイアホテル七一六号室となっていることなどの客観的事実にもよく符合していることなどからすれば、右証人コスキー及び被告人オプヨの当公判廷における右各供述には十分な信用性を認めることができる。

したがって、以上の諸事実を総合考慮すれば、被告人ナチュックは、新東京国際空港で携帯品である本件スーツケースの税関検査を受けた際、その中に本件ヘロインが隠匿されていた事実を認識していたものと優に認めることができる。右の認定に対する被告人ナチュックの弁解は前記のとおりであるが、前掲の関係各証拠によれば、同被告人がバンコクで購入した洋服はすべて被告人ナチュックの体型に合った物であり、しかもそれが全部で五着しかない上、以後の洋服の注文方法等について何ら具体的方策を講じていないこと、被告人オプヨも同時に自己が着用する目的で五着の洋服を購入していることが認められ、右事実及び前記認定の客観的事実からすれば、被告人ナチュックの前記弁解は不合理であると言わざるを得ず、更に、被告人ナチュックの大蔵事務官に対する答弁調書や検察官に対する供述調書によれば、被告人ナチュックは、大蔵事務官や検察官の取り調べに対し種々の弁解を述べているにもかかわらず、ジョン及びカーチスなる者や氏名不詳の女性のことについては一言も供述していないことなどが認められ、これらの事情を総合考慮すれば、被告人ナチュックの弁解は到底措信できず、他に、被告人ナチュックが、前記税関検査の際本件スーツケースの中に本件ヘロインが隠匿されていた事実を認識していたという前記認定に合理的疑いをさしはさむ事情は何ら認められない。

したがって、被告人ナチュック及び同被告人の弁護人のこの点についての前記主張は採用しない。

二  被告人オプヨの本件ヘロインの存在についての認識

前掲の関係各証拠によれば、本件ヘロインは、ビニール袋一〇袋に入れられ、五袋ずつを一塊として黒色ビニールテープで巻かれた上から新聞紙(前同号の11、14)で包まれ、これに二種類の黒色テープ(同号の12、15)が巻き付けられた後、各々動物柄入りの布地(同号の13、16)で覆われ、更に紙袋(同号の17)に入れられて、本件スーツケース(同号の18)の中に隠匿されていたものであるが、右動物柄入りの布地及び本件スーツケースはいずれも被告人オプヨの所有物である上、右新聞紙の上から巻かれた二種類の黒色テープのうちの一種類と幅及び色の一致するテープ(同号の19)が、同被告人所有の灰色布製スーツバッグの中にあったこと、被告人両名は本件で本邦に入国する前、バンコクのニューエンパイアホテル七一六号室に同宿していたこと、バンコク国際空港において本件スーツケースの運送委託の手続をしたのは被告人オプヨ自身であること、本件スーツケースには錠が付いており、バンコク国際空港で被告人オプヨが右スーツケースの運送委託をした時にも新東京国際空港で被告人ナチュックが携帯品検査を受けた時にもその鍵が掛けられていたこと、右錠の鍵は被告人オプヨ所有の灰色布製スーツバッグの中に入っていたこと、被告人オプヨは平成二年五月二二日午後三時一五分ころ新東京国際空港に到着し、午後四時一五分過ぎころ、通関手続を終えて本邦に入国したが、その後、被告人ナチュックが税関検査場から別室に任意同行された午後四時三〇分ころから二時間ほど経過した午後六時三〇分ころ、同空港内にあるコンチネンタル航空のチェックインカウンターにやって来て、既に午後五時に出発した同航空三八便に搭乗したい旨申出たこと、同被告人は、この間、アメリカ合衆国を発って以来一貫して行動をともにし、新東京国際空港で一緒に航空機を降りた被告人ナチュックの消息や被告人オプヨ所有の本件スーツケース及び灰色布製スーツバッグの所在について、空港や航空会社の職員等に問い合わせたりした形跡は全くないこと、同被告人は、当初大蔵事務官に対して、本件スーツケース及び灰色布製スーツバッグについては、入国審査手続前に被告人ナチュックに通関手続を依頼した旨述べていたことが認められるところ、右認定の本件ヘロインの隠匿状況等からすれば、被告人オプヨが本件ヘロインの隠匿に関与していたと強く推認される上、右認定の新東京国際空港到着後の被告人オプヨの行動、すなわち、同被告人は、通関手続を経た後、被告人ナチュックの消息や自己所有の本件スーツケース等の所在が不明であるにもかかわらず、これを探そうともせず、単身出国しようとしていたことからすれば、被告人オプヨは、被告人ナチュックが本件ヘロインを発見されて捕まったこと、すなわち本件ヘロインが本件スーツケースの中に隠匿されていたことを認識していたと優に推認することができる。

これに対して被告人オプヨの弁解は前記のとおりであるが、宿泊していたホテルからタクシーで三〇分ないし四五分もかかるほど離れた店に洋服の洗濯を頼むということ自体不自然不合理であるばかりでなく、証人ジェフリー・コスキーの当公判廷における供述によれば、被告人両名から同人に本件ヘロイン運搬の依頼の話が数回あったものの、同人は一度も右依頼を承諾したことがないことが認められ、また、前掲関係各証拠によれば、被告人オプヨは、月収が二〇〇〇ドルないし三〇〇〇ドルでしかないところ、自己の分だけでも二〇〇〇ドル以上の往復航空運賃を掛け、更にヴィジェー・ベデダの航空運賃の半分を負担した上でタイ王国へ渡航し、本件ヘロインの代金の一部である五〇〇〇ドルを支払って被告人ナチュックとともに本件ヘロインを購入したことが認められるのであって、被告人オプヨにとって本件ヘロインは非常に貴重で高価なものであると考えられるのに、同被告人の当公判廷における供述によれば、同被告人は、被告人ナチュックから、本件ヘロインの運搬依頼を何度も断わっていた右コスキーが突然その運搬を承諾したと聞かされ、これをコスキーに確認することもなく、被告人ナチュックの右の話を信用してしまい、かつ、タイ王国から出国するときには、右コスキーが後に取りにくるということで、被告人両名が宿泊していたホテルの部屋に本件ヘロインを置いたままにしたと思っていたというものであって、不自然、不合理であるし、しかも、アメリカ合衆国へ運搬した後の本件ヘロインの受渡方法や報酬の支払方法などについて具体的な話し合いがなされたとは認められないことなどからして、被告人ナチュックの話を聞いて右コスキーが本件ヘロインを運搬するものと信じていた旨の被告人オプヨの弁解は容易に措信することができない。そして、他に、被告人オプヨが、本件スーツケースの中に本件ヘロインが隠匿されていた事実を認識していたという前記認定に合理的疑いをさしはさむ事情は何ら認められない。

したがって、被告人オプヨ及び同被告人の弁護人のこの点についての前記主張は採用しない。

三  被告人オプヨの本件ヘロインを本邦内へ搬入することの故意

前掲の関係各証拠によれば、被告人オプヨは、バンコクでノースウエスト航空二八便に搭乗する以前に、新東京国際空港でいったん入国手続をして本邦に入国した上、携帯品について税関検査を受けなければならないことを認識していたと認められるところ、右認識が新東京国際空港における通過客の乗換え手続について被告人オプヨが誤解をしていたことによるものだとしても、被告人オプヨは本件ヘロインを我が国の統治権が現実に行使されていない地域であるタイ王国バンコクから、我が国の統治権が行使されている地域である新東京国際空港に搬入し、かつ、税関の実力的管理支配の及んでいる新東京国際空港税関検査場を通過させることを正確に認識していたのであるから、右認識は麻薬取締法及び関税法上の輸入の認識として何ら欠けるところはなく、被告人オプヨに本件ヘロインを本邦へ搬入することの故意があったことは優に認められるので、この点についての被告人オプヨの弁護人の主張は採用しない。

四  被告人両名の本件犯行についての共謀

前掲の関係各証拠によれば、被告人両名は、本件ヘロインをアメリカ合衆国に密輸する目的で一緒にタイ王国へ渡航したものであり、平成二年五月一五日同国チェンマイに赴いて本件ヘロインを購入し、翌日バンコクに戻り、バンコク滞在中は、ホテルの同じ部屋に同宿しており、同月二二日にはバンコク国際空港から同じ航空機で日本へ向け出国するなど、常に行動をともにしていたこと、被告人両名は、同月一九日ころ、右宿泊していた部屋で本件ヘロインを受領した後、それを同部屋内に置いておいたことが認められ、右事実と被告人両名が本件スーツケース内に本件ヘロインが隠匿されていることを認識していたとの前記認定事実とを合わせ考慮すれば、被告人両名が本件犯行について共謀していた事実は優に認められるのであって、右認定に合理的疑いを抱かせるような事実は何ら認められず、この点についての被告人両名及び被告人両名の各弁護人の主張は採用しない。

(法令の適用)

被告人両名の判示所為中、麻薬不正輸入の点はいずれも刑法六〇条、平成二年法律第三三号附則五条、同法による改正前の麻薬取締法六四条二項、一項、一二条一項に、輸入禁制品輸入未遂の点はいずれも刑法六〇条、関税法一〇九条二項、一項、関税定率法二一条一項一号にそれぞれ該当するところ、右はいずれも一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条によりいずれも一罪として重い麻薬不正輸入の罪の刑で処断することとし、情状によりいずれも所定刑中有期懲役刑及び罰金刑を選択し、その所定刑期及び金額の範囲内で、被告人両名をいずれも懲役一〇年及び罰金一八〇万円に処し、同法二一条を適用して被告人両名に対し、未決勾留日数中各二五〇日をそれぞれその懲役刑に算入し、被告人両名においてその罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五〇〇〇円を一日に換算した期間その被告人を労役場に留置し、押収してあるビニール袋入りヘロイン一〇袋(平成二年押第一八七号の1ないし10)は、判示麻薬不正輸入の罪に係る麻薬で、犯人である被告人両名の所持するものであるから、麻薬及び向精神薬取締法六九条の三本文によりこれを没収し、訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項ただし書を適用して被告人両名に負担させないこととする。

(量刑の理由)

本件は、被告人らが共謀の上、営利の目的で約二キログラムのジアセチルモルヒネ(ヘロイン)をタイ王国からアメリカ合衆国へ密輸する途中で本邦に持ち込もうとした事案であるが、麻薬の中でも最も毒性の強いヘロインを極めて多量に持ち込もうとしたこと自体厳しく非難されるべきであること、本件ヘロインを隠匿した本件スーツケースの所有者ではない者が税関検査を受けており、これは税関で本件犯行が発覚したときの言い逃れのためと考えられるなどその態様は巧妙かつ悪質であること、被告人ら自身が主体となってアメリカ合衆国で本件ヘロインを売却して利益を得るために本件犯行を敢行したもので、動機に酌むべき事情はないこと、被告人ナチュツクは本件犯行を全面的に否認し、また、被告人オプヨは、タイ王国でヘロインを購入したことは認めるものの、他の者によりアメリカ合衆国へ密輸されるはずであったとして、本件犯行の故意を否認しており、被告人両名とも反省の情が認められないことなどを考慮すると、被告人両名の刑事責任は極めて重いと言わざるを得ず、幸いにも本件ヘロインはすべて税関で発見、押収され、それが社会に拡散することは未然に防がれたこと、被告人らには前科がないことなど被告人らに有利な諸事情を最大限考慮しても、なお、前記刑事責任の重大性からすれば、主文掲記の量刑はやむを得ないところである。

よって、主文のとおり判決する。

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